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相続手続き(名義人と本人の同一性の立証)

昭和30~40年代につくった別名義の預金口座に数百万円入っているが、本人確認ができなくて解約できなくて困っています。

相談者
年代:80代
性別:女性

ご相談の経緯

被後見人の預金通帳の名義が違うため、解約ができない

認知症になったNさんのために銀行口座の預金を見直していた成年後見人。とある銀行の口座に数百万円の預金があることがわかり、Nさんの生活費に充てるために解約しようと思ったのですが、銀行口座の名義はNさんとはまったく別の名前と住所になっています。通帳も印鑑もNさんが所有しており、彼女が開設した口座であることは間違いないと推測できるのですが、当のNさん本人は認知症のため意思疎通が思わしくできず、このままでは本人確認ができません。とはいえ、Nさんの今後の生活費として、預金は必要です。成年後見人としてできる範囲を超えていると、困ったY先生は弁護士に相談することにしました。

 

ご相談のポイント

銀行口座を解約するためには本人確認書類が必須

解約できない銀行口座が作られたのは昭和30年代。当時は本人確認が今ほど厳しく求められず、比較的かんたんに銀行口座をひらくことができました。Nさんは、当時風俗店を経営していたこともあり、本名とは違う名義で口座を開設したと推測できます。通帳も印鑑も揃っていて状況的には確かにNさん本人の口座であり、Y先生は成年後見人のため、本来であれば解約手続きができるのですが、口座を解約するためにはその名義がNさん本人であるという証明が必要です。銀行からの回答も「預金名義人と本人の関係性をある程度証明していただき、裁判所で同一と認められれば従います」というものでした。

たちばな総合法律事務所に依頼された結果

戸籍や住民票、他の銀行口座などを辿り、同一性を立証

銀行口座の名義はNさんのフルネームとはまったく異なり、住所もNさんが住んでいた場所ではありません。当時の風俗店ということで決算資料など商売に関する書類などもなく、依頼された当初はNさんが通帳と印鑑を持っているという事実しか根拠はありませんでした。弁護士は住民票や戸籍を辿り、名義の住所近くに居所を構えていなかったかを調査。戦争経験者にはよくあることですが、Nさんも多分にもれず、調査は難航しました。Nさん本人からも結局話を聞くことはできず、証明はむずかしいと思われましたが、粘り強く調査し、Nさん名義の別の銀行口座の履歴を辿ったところ、当該住所の建物の電気やガス、水道代などの光熱費が引き落とされていたことがわかりました。それが決め手となって、裁判所も同一性を認めることとなり、無事銀行口座を解約することができました。

 

弁護士からのコメント

元気なうちに、今一度見直して身辺整理を

現在では本人確認書類も厳しく、なかなかこういった場面に発展することはありませんが、大正時代や昭和初期生まれの方の場合には十分に考えられる事案です。ご本人がお元気なときには簡単な手続きで済むことも、認知症で意思の疎通がむずかしくなったり亡くなってしまった後では困難になることもあります。成年後見人である司法書士の先生からのご依頼であったように、司法書士であっても今回のように異なる名義の同一性の立証はむずかしく、個人の方では不可能に近いと思われます。できれば元気なうちに、お金のことや不動産のこと、事業のことなど今一度見直し、整理されることを強くおすすめします。

まとめ

今と昔の法律や情勢の違いによって、思いもよらないトラブルが発覚する可能性は決して少なくはありません。今回のケースも、お元気なときに貯金を下ろしたり預けたり、普通に使っている間は特に支障もないため、まさか解約できないとはNさん本人も思ってもみなかったことでしょう。元気なうちの生前整理が第一ですが、いざ困ったときにも諦めてしまわず弁護士にご相談ください。解決の糸口をご提案いたします。

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